はじめに
前回の投稿から半年以上経ってしまった。この間、仕事だけでなく、大学院入学準備で忙しく、ブログ更新できなかった。
実は、10月からロンドン大学London School Hygiene and Tropical Medicineのオンライン大学院Distance Learning MSc programmeに入学する。ネット上に日本語での情報が少なかったため、多少の苦労があった。
今後希望する人のためにも、前例として情報を共有したい。
なぜオンライン大学院か
現在、私は調査会社に勤めており、環境保健に関する文献調査、リスク評価などを行っている。仕事をする中で公衆衛生や疫学に関する知見が足りていないことを日々実感している。
私自身を含め、会社には環境分野に精通する人は多いが、医学系の経験者はほぼいない。
疫学を体系的に学び、専門性を証明する資格を持つことで、環境分野の民間企業の中で役に立てる存在になれるのではないかと思い、入学を目指すことにした。
自分のやりたいことと今の仕事はマッチしていて、かつ疫学に関して手を動かしているのは業務のみなので、仕事を続けながら大学院に通える場所を探すことにした。あわよくば、日本の大学教授とのコネができれば、今後の仕事にも役立てられると考えた。
大学院を調べたところ、日本の大学だと、
・医療従事者以外が公衆衛生を学べる大学院は少ない
・仕事を続けながら学ぶパートタイム学生や、オンライン受講を認めている大学院は少ない
・国公立で該当する大学院はほぼなく、私立の大学院は学費が高い(2年間で少なくても300万は超える)
そこで海外にも目を向けたところ、
・米英の大学院はオンライン教育を提供しているところがあり、有名大学もある(随分前からやっていたらしい)
・英語圏以外の大学もあったと思うが、候補が多くなりすぎるので調べなかった
・アメリカの大学院は高すぎる(1000万円超えるため普通の会社員はまず無理…)
・イギリスの大学院は世界トップクラス校もありながら、学費300〜500万円でなんとかなる(結局日本の私立と同じ程度)
・イギリスの公衆衛生系の大学院に絞り、10数校をリストアップ
せっかく高い授業料を払うなら大学院の知名度もあったほうがいいという気持ちで、ロンドン大学を目指しつつ複数大学に出願し、受かったところに入学する戦略を取ることにした。
なお、英国大学院選びやスケジュールは以下の記事を参考にした(情報が限られる中、大変参考にさせていただきました、本当にありがとうございました)。
30代半ばで目指すonline海外大学院(MSc in Public Health,MPH)|ばびろにあ
スケジュール
私の準備から合格までのタイムラインを以下に記載した。オンライン大学院は1年間ずっとオープンになっている(10月入学なら11月から翌年分の入学受付が始まる等)ため、準備が早いに越したことはない。
昨年11月 オンライン英会話を再開
この時はまだ大学院を本気で考えてはいなかった。
1月 大学院受験を決意、調査を開始
公衆衛生分野での大学院入学を志し、国内外の大学院を調べた。
2月 大学院リストを作成、IELTS申し込み
イギリスの学校に絞り、公衆衛生分野でのランキングの高い順に調べてオンラインプログラムを提供している10数校をリストアップし、エクセルに整理した(上記サイト参考)。
英語資格は大学により利用可能な試験が微妙に異なったが、IELTS academicはどこも受け入れていたため、IELTSを申し込んだ(1回24000円、高い…)
3月 IELTS勉強
久しぶりに参考書を2冊買って勉強した。仕事で英語を読むのでreadingはまあまあだが、それ以外の課目のスコアが低く焦った。
4月 IELTS1回目の受験
模擬テストのスコアが上がらないまま受験した。
5月 IELTS勉強
スコアが返ってくるまでの2週間はIELTS勉強を休んでいたが、その後再開した。
6月 IELTS2回目の受験、願書作成
スコアが低かったlisteningとspeakingに絞り勉強し、再受験→惨敗した。
願書(自己アピール文、CV)を本格的に作成した。
7月 推薦書準備、合格
元指導教員と現在の上司に依頼するための推薦書原稿を作成した。
その間に合格のメールが来た。英語スコアは足りなかったが、無条件合格であった。
留意点
結果的に受かったのでよかったが、今後受ける方は以下の懸念があるため、とにかく早めに出願することを心に留めておいてほしい。
・コースの受け入れ人数に限りがあるはず(明記はされていないが)
・個人の特性(人種、国籍、性別、職業、障がいの有無など)も考慮して生徒のバランスが取られる
・出願締め切りが9月でも奨学金の締め切りは3月だったりする(そもそも日本人が応募できるものがほとんどない…)
・英語のスコアが足りなくても条件付き合格する可能性がある(入学までにスコア満たしてねというお願いが来るはず)
とはいえ、落ちたら同じコースには次の年まで受験できないため、万全な準備をしてから臨みたい気持ちもわかる。
対策等
IELTS対策
4課目すべてが一通り勉強できる本1冊と、苦手意識のあったwritingだけの本を1冊購入したが、全部は解き切らなかった。
IELTSを申し込むと、無料で受けられるオンラインコース(練習問題、模擬試験)を受講できて、そちらを3ヶ月くらい毎日やり続けた。
2ヶ月勉強して受けた1回目はoverall 6.5(reading 7.0, listening 6.5, writing 7.0, speaking 6.0)であった。試験当日、開始時間に余裕を持って行ったつもりが、試験会場入場の締め切り時間ギリギリだったことがわかり、非常に焦った。英検協会から当日の案内メールは来ず、自分でマイページにログインして確認しろということだったことに後から気が付いた。皆さんは気をつけて。
さらに2ヶ月勉強して受けた2回目はoverall 6.0(reading 6.5, listening 6.0, writing 6.5, speaking 5.5)と下がってしまい、この2ヶ月の努力はなんだったのだと落胆した…。
私の志望校はIELTS 7.0が必要だったが、諦めて条件付き合格を狙うことにした。ちなみに、英語の条件がIELTS 6.5の大学院として名門University of Liverpoolがあった(大学ランキングが全てではないが、ランクを下げれば必要な英語のスコアも下がる傾向がみられた)。
自己アピール文
出願時に、Personal statementと呼ばれる自己アピール文を書く必要がある。私の場合、DeepLの助けを得ながら、英語で考えて書いた。大学によって文字数制限が異なりかつ、聞かれていることも違うため、大学ごとにカスタマイズして考える必要がある。
DeepL write とGramary(どちらも無料プラン)を使って文法チェックをし、以下の英文校正サービスを利用した。論文の校正サービスはよくあるが、Personal statementを見てくれるサービスは少ない。
英文校正/校閲・日英翻訳 - ネイティブチェックサービス | ワードバイス
返ってきた文章を、ネイティブの英会話Camblyの講師3人に見てもらった。うち1人は大学院経験者であり、一番的確な修正をしてくれた。出願時に成績表を出す必要があるのだが、私の場合、書類上の教員の嫌がらせで博士課程の成績が悪かったという深刻な懸念があった。講師に事情を説明したら「私も似たような経験をして苦労した」と言ってくれて、丁寧な文章に直してくれて大変助かった。
English Tutors Online - Cambly
CV
英語の履歴書はシンプルだが、1枚にアピールできるポイントを書き込んだ。Personal statementには文脈上書きにくいがアピールしたい内容を、CVに書くイメージでまとめた。
職歴には現在の仕事で環境保健に関すること、学歴には研究テーマを書いた。また、公表されている筆頭著者の論文、学会発表、所属学会も書いた。
推薦書
研究でお世話になった教員と、現在の職場の上司にお願いするつもりで、5月くらいにはメールもしくは口頭で軽く依頼していた。
日本人に推薦書をお願いする時は日本語で書いて英訳するほうが、推薦者にとって読みやすいという情報を読んだため、最初に日本語で書いた(Personal statementで気力を使い切ったというのもある…)。
英文を書き上げ、校正に出そうというタイミングで、第一志望から合格通知が来たため、それ以上は進めていない。
Personal statementと推薦書については以下の動画を参照した。社会人大学院生なので、当てはまらないこともあるが、参考になった。
入学金
覚悟はしていたが高額だった。円とポンドのレートが少しでもいい時にと思い、何度もレートをチェックしたが、入学金と初年度に受ける講義の授業料で200万円をゆうに超えた。
円安が進みかつ、授業料は1年で5%程上がるため、当初予定していた授業料(ポンド-円)の計算よりは確実に高くつく。
奨学金については調べてはいたが、大学が情報公開していた奨学金は高所得国の日本の学生にはあてはまらなかった。自分でも調べてみたが、社会人を続けながら学生、現地留学ではない学習環境という条件だと、該当する奨学金は残念ながら見つかっていない。
終わりに
オンラインの教育機会を目指す人に少しでも助けになれば幸いである。今後オンライン講義をしばらく受けてから、授業の様子や学習スケジュールなど紹介できればと思う。