更新:2023/06/17 ハザード比の説明を修正
〇何のために使われる比?
オッズ比、相対リスク、ハザード比はともに「比」を表す。これらは疫学、生命科学などの分野において、ある評価指標の起こりやすさを示す尺度として使われる。病気であれば、対象となる疾患の罹りやすさの指標と言える。
〇オッズ比の定義、単位は?
オッズは、ある現象が起こる確率pを考えたときに、p/(1-p) で表される。論文等ではORと略されます。以下の分割表で、あるイベントについて考える。
暴露 非暴露 合計 症例 A B A + B 対象 C D C + D
このとき、
症例の曝露オッズ= A/B、対象の曝露オッズ=C/Dと定義される。そしてこれらの比である、(症例の曝露オッズ)/( 対象の曝露オッズ) = (A/B)/(C/D) = AD/BC をオッズ比(Odds Ratio)と呼ぶ。比なので、単位はない。
曝露によるイベントの発生が症例群で多い場合に、症例の曝露オッズA/Bの値が大きくなり、オッズ比も大きくなることがわかる。一方で、曝露と疾病に関係がなければ、オッズ比が1に近づくことも見て取れる。
〇相対リスク(相対危険)の定義、単位は?
上記の定義で、相対リスクとは何か考えてみる。論文等ではRRと略される。
曝露群の中で症例を発症するリスクは、母数分の症例数であるA/(A+C)で定義される。一方、非曝露群で症例を発症するリスクは、B/(B+D)となる。これらの比である、(曝露群で症例を発症するリスク)/(非曝露群で症例を発症するリスク) = [A/(A+C)]/[B(B+D)]をリスク比と呼ぶ。
相対リスクの特徴は、曝露群と非曝露群の割合を数値で表せることである。例えば相対リスクが2の場合、曝露群が非曝露群の2倍リスクがあるということを意味している。一方で、曝露と疾病に関係がなければ、リスク比は0.5になる。
〇ハザード比の定義、単位は?
ハザードとは、観察期間のある時点でイベント発生率のことを指す。ハザードは時間ごとに変化し、観察対象の総数(つまり分母)は不変とすれば、イベント発生率は時間ととも減っていく。この様子を描いたグラフのことを生存曲線と呼ぶ。
曝露・非曝露群における生存曲線を作成したときに、これを比較して計算される比のことをハザード比と呼ぶ。論文等ではHRと略されます。ハザードが起こる確率が群間で差がなければ、ハザード比HR=1である。比なので、単位はない。
ハザード比は、Cox比例ハザード・モデル(Cox回帰)によって計算される係数の指数をとって算出される。モデルの詳細はまた後日に。
〇使い分けは?
まずオッズとリスクの使い分けについては、
・オッズ比は、2つ(以上)のことに関心がある場合に用いられる値。後ろ向き研究や横断研究でも用いられる。
・リスク比は、イベント事態に関心がある場合に直感的に理解しやすい値。前向き研究でしか用いられない。
また、発症がまれなケース(オッズが1以下でさらに小さい場面)では、オッズ比とリスク比が近似することが知られている。
一方で、ハザード比は算出方法が異なるというだけでなく、時間も考慮しているということに違いがある。単位期間あたりのイベント発生率を計算しているという点で、オッズ比とは概念的に異なる。
〇まとめ
今回はよく似ているオッズ比、相対リスク比、ハザード比についてまとめた。文献だとOR、RR、HRと略され、よく似ているので、文面によって著者の表したいことが異なることを意識して読む必要がある。