Hazy Ideas

日々の勉強の気づきを書き出しています

疫学

複数文献のリスク比と平均濃度をプロットした図の意味を考える

正解のない問題を考えてみます(これは所属組織の見解等ではなく、個人の考えを整理するためのもので、責任は持てません)。 環境基準を策定する場面を考えます。ある物質への曝露により、ある健康影響が出るとしたとき、閾値がある(LOAEL、NOAELが検討でき…

コホート研究における相対リスクとハザード比の使い分け

相対リスク(リスク比)とハザード比は、どちらをどういうときに選ぶのでしょうか。今回は使い分けをまとめてみました。 相対リスク(リスク比)とハザード比のおさらい 相対リスク(リスク比)は、危険因子に曝露した集団と曝露していない集団の、疾病の発…

症例対照研究でなぜ相対リスクが使えないのか

疫学研究の評価指標として、症例対照研究はオッズ比、コホート研究は相対リスクとざっくり覚えている人も多いかと思います。今回は、なぜ症例対照研究に相対リスクが使えないかを考えます。 症例対照研究とは 評価したい疫学指標における、症例集団と対照集…

相対リスクという概念に含まれる複数の推定値

「相対リスク(相対危険、relative risk)」という表現の中に、複数の指標が包括されていることはご存じでしょうか。今回は、相対リスクの種類についてまとめました。ここでの用語の意味や区分は、書籍や研究者によっても異なる可能性があるので、参考として…

リスク比とリスク差の違い(罹患率と累積罹患率)

疫学文献を読んでいると、両方の尺度が掲載されていることがあり、どっちがどういう意味だっけ?となることがあるので、まとめました。 リスク比(相対リスク)とは リスク比は英語でrisk ratio, relative riskと言い、RRと略されます。 分割表で、調査期間…

異質性と均質性とは

メタ解析論文を読んでいるときに見かける、異質性と均質性という言葉について解説したいと思います。 異質性とは 異質性は英語ではHeterogeneityと言います。メタ解析では複数の文献の、複数の結果をまとめて図表として表記します。オッズ比などの比の形で表…

【R】モデルを用いたオッズ比の求め方

今回はRで、既存のデータセットを使用して、オッズ比計算をデモンストレーションしてみます。使用するのはEpiパッケージのdietデータセットです。 このデータは、冠状動脈性心疾患イベントと食事の関係性を評価するためのデータセットです。 参考:Rの学習に…

偏りと交絡の違い

疫学のデータを扱うとき、もしくは文献を読むときに、データが偏りや交絡の影響を受けていないか注意して解釈する必要があります。 偏りとは 偏りとは、観察された結果が真実の姿からある方向にずれている状態を表します。偏りには2種類あります。 1つ目は、…

交絡因子と調整因子の違い

疫学において、 飲酒者と肺がん発症に関連がみられる(実際には、飲酒習慣がある人に喫煙者が多いことが要因) コーヒー引用習慣がある人に心筋梗塞発症に関連がみられる(実際には、コーヒー引用習慣がある人に喫煙者が多いことが要因) のような事象が見ら…

【R】既存データを用いて分布ラグモデルを動かしてみる

ひとつ前の記事でdlnmパッケージのデータセットを使用しました。今回は、dlnmパッケージのチュートリアルに概ね従いながら、分布ラグモデルの動きを確認していきます。以下リンクは参考にした情報です。 http://www.ag-myresearch.com/uploads/1/3/8/6/13864…

【R】既存データを使って相対リスク計算の試算をしてみる

公開されている疫学文献データを用いて、相対リスクの計算を行ってみます。主な目的は2つです。 ・データに対する分布を検討する ・調整モデル、複数汚染物質モデルなどを検討する 使用するパッケージはdlnmです。このパッケージを作成した研究者が解説情報…

【Rで疫学】記述統計表とグラフ

今回は、適当に作成したデータを用いて、記述統計に用いる要約統計量をまとめた表と、可視化の方法として箱ひげ図を作成してみます。 方針としては、子供の肺機能と身長・体重、既往歴などを含めたデータを作成して、学年と性別ごとに並べて見比べることにし…

超過死亡と過剰死亡リスクの違いは

超過死亡とは 国立感染症研究所によると以下のように定義されています。 「超過および過少死亡数は、「過去のデータをもとに統計モデルから予測された死亡数」と「実際に観測された死亡数」の差」 https://exdeaths-japan.org/ ある期間の例年の死亡数をもと…

システマティックレビューとメタ解析の違い

両者は同義として用いられることもありますが、意味合いは異なります。 システマティックレビューとは 定義としては、特定の課題に答えるために、明確に定義された手法によって、系統的で網羅的に知見を収集・評価する方法のことを指します。Wikipedia英語版…

コホート内症例対照研究とは

〇コホート内症例対照研究の定義は? 英語ではNested case-control studyである。コホート研究の追跡期間中に発生した症例を対象として、同じコホート内から対照となる集団を選択する研究である。集団の選択は、症例が発症してから行われるためこのような名…

後ろ向きコホート研究と症例対象研究の違いは?

〇後ろ向きコホート研究とは コホートは属性によって区別できる集団のことだった。後ろ向き(回顧的、英語ではretrospective)コホートは、あらかじめ曝露情報がわかっていて、それに基づいた集団の定義が可能な場合に行われる。解析結果としては相対危険度…

症例対照研究と横断研究の違いは

〇症例対照研究とは 英語ではCase control studyである。調べたい対象を、影響を受けた群(曝露群)と受けていない群(非曝露群)にわけて、現在の疾病に対して、過去の曝露因子を評価する。評価のアウトカムはオッズ比を取ることが多い。 〇横断研究とは 英…

コホート研究と縦断研究の違い

〇コホート研究とは 疫学における追跡調査研究のことで、調べたい対象を、影響を受けた群(曝露群)と受けていない群(非曝露群)にわけて、比較する方法である。集団の属性を合わせることで、評価したい影響が健康状態にどの程度影響を与えるか評価する。評…

ケースクロスオーバー研究とケースコントロール研究の違い

〇ケースクロスオーバー研究 観察研究のデザインの一つであり、日本語で自己対照研究や、交差試験・交互試験などとも呼ばれる。疫学において疾病のリスクを評価するためには、何かを比較する必要がある。ケース(症例)に対して、コントロール(対照)の情報…

アットリスク集団とは

コホート研究に関する用語として出てくることのある、アットリスク集団についてまとめた。 〇アットリスク集団とは 英語ではpopulation at risk、日本語だと単に「リスク集団」とも呼ばれることがあるそうだ。疫学研究として追跡調査するコホート(同じ属性…

Prevalence ratioとRate ratioの違いはあるか

併記するようなものではないが、名前が紛らわしいのでここで整理しておく。 〇Prevalence ratioとは 有病率比、より正確に言うならば「有病割合比」である。論文などではPRと略されることがある。 (割合については:割合、比、率の違い) とある母集団から…

オッズ比の信頼区間の計算方法と変換方法

〇オッズ比の95%CIの計算方法は? とある母集団から抽出したサンプルにおいて、ある現象が起こる確率を考える。 曝露非曝露合計症例ABA + B対象CDC + D 信頼区間を計算する前に、誤差因子を計算する。 誤差因子 = exp (1.96 ×√(1/A + 1/B + 1/C + 1/D)) exp…

疫学研究方法の種類は?コホートとは?

〇疫学研究手法とは 人の健康状態を明らかにするための疫学の目的であるが、調査するには多くの人間集団を対象にした研究が行われる。手法は大別すると、観察研究と、介入研究に大別される。それぞれの研究に利点・欠点があり、費用と労力を加味して研究デザ…

オッズ比、相対リスク、ハザード比の違い

更新:2023/06/17 ハザード比の説明を修正 〇何のために使われる比? オッズ比、相対リスク、ハザード比はともに「比」を表す。これらは疫学、生命科学などの分野において、ある評価指標の起こりやすさを示す尺度として使われる。病気であれば、対象となる疾…