Hazy Ideas

日々の勉強の気づきを書き出しています

後悔はないか

偉い先生に今の場所を離れることを報告した。

 

どう思われたかはわからない。お世話にはなったが、アカハラ教員とのつながりが強いため、相談レベルの段階で声もかけられないし、筒抜けになるだろうと思っていた。自分が研究から離れることで、その先生にはデメリットしかない(無償で手を動かせる駒がやめるわけなので)ため、言いだしづらかった。

 

本当に研究をやめる選択をしてよかったのか、あとでそう思わないように考えをまとめておく。

 

Q. なぜやめなければならなかったか。

指導教員によるアカハラで研究室を離れざるを得なかった。嫌がらせがひどく、他の学生も一時的に教室にこれなくなっていたし、自分の場合は指導者であったがゆえに、コミュニケーションをとらざるを得ない、でも無視されるので話にならない。該当教員は頻繁に他の多くの研究者や学生と喧嘩し、一度関係を断つと二度と交流が戻ることはない。ゆえに。攻撃の矛先が自分に向かった時、「もう私の研究は終わった」と思った。自分の研究はその教員名義で進めていたので、サンプルもデータも使えなくなった。私が書いた研究費の申請書を、その教員の研究都合で書き換えられて、通過したら後は当然私はその研究費を使えないということもあった。ポスドクの間に、溜まっていたデータを論文化して業績を積みたかったが、それができなくなった。

会社において人間関係のトラブルがあったら、所属替えがあるだろし、どうしようもなければ転職するだろう。その教員から離れるためにも、大学を出る必要があった。でも他の先生にとって私が外部でポスドクをするメリットがないため、外に出させてくださいとは言えなかったし、支援してもらえなかっただろう。

 

Q. 周りに相談できなかったのか

相談できる人はいなかった。教員が秘密主義で、誰とも喋るなという強迫観念があった。その教員が外部から連れてきた人とは話していいのかと思ったが、しばらくすると例外なくその人たちの悪口を言いはじめた。挙げ句の果てには大喧嘩して、大人が職場で使ってはいけない言葉で罵倒し始める始末。

学内の事務方さんには話は通したが、それは相談ではない。やはり研究者とスタッフでは同じ職場にいても取り組む目的や緊張感が違う。大学時代の友人や、前職の同僚には相談した。自分から連絡を入れられるメンタルではなかったにも関わらず、定期的に連絡をくれる人たちがいることが、本当にありがたかった。彼らがいなかったら、人間社会に復帰できていなかったと思う。

何人かの先生には報告という形でお話したが、誰にも詳細を聞かれなかった。よくあることだからなのか。自分が悪かったのか、その教員が悪かったのか、そうした意見ももらえない。お叱りも励ましもなく、ただ報告に対し淡々とした返事しかもらっていない。何か意図があってのことだったと思うが、心がないと感じ、一層帰属意識が無くなってしまった。

 

Q. ポスドクには進めなかったのか。

他の先生から、卒業後のポスドク打診はあったが、成果になるまで最短でも3年はかかる。業績なく3年も待ったら、自分は何歳になるのか。資格もないので、少ない業績では、100倍以上の倍率の世界で生き残れない。そのあとには何もつながらない。詰んだ。

 

Q. 研究は続けたくなかったのか。

研究テーマが飛んだ。メンタルがやられていた。だがそれだけでなく、自分一人で突き詰めたい、研究仮説がなかった。期間が短すぎたのか、いや目の前のことに一生懸命になりすぎて、広くアンテナを張っていなかったのかもしれない。前提の後ろ楯がなくなったとき、それでも自分で進められるほど、手元に材料もスキルもなかった。

 

Q. 当初の目的は達成できたのか。

入学前は研究職以外の可能性も含めて考えていたが、途中から研究を進めたいという責務で動いていた。全部なくなったとき、それでも科学に貢献したい、成果を公表したいと思っていたが、虚無感からその思いも段々と薄れてきた。

それと同時に、実社会を舞台にスピード感を持って、専門性を生かしたいという思いもあった。アカデミアで感じていた自由と不自由を、昇華できるような仕事をしたいと思った。この一見不思議なキャリアを無駄にせず、プラスに変えられるような職を得たい。

 

Q. 博士に進んでよかったか。

後悔はない。でもやり直せるなら過去の自分に、大学を、教員を考え直せと言いたい。これ以上は考えても仕方ない。

得たものはある。これはどこで進んだとしても得られた汎用的な、科学的に物事を考え、独学で着実に学ぶ力。修士でやりきれなかった思いを昇華することができたと思う。まだスタートラインだけども、やりきったという思いはある。

また次の仕事は、修士の時に行きたいと思っていた会社の一つだから、進学に意味はあったともいえる。

 

Q. アカデミアをやめる決断をしてよかったか。

後悔はないと思う、今のところ。次に進めること、これまでのキャリアをつなげられたことは喜ばしい。専門を突き詰めた経験を生かして、それを抽象化してより拡張した分野で、理性ある大人として活躍し、社会に貢献したいと心から思っている。